相続人に認知症の人がいるとき
成年後見の申立てと、費用・期間
相続人の中に、認知症などで判断能力が十分でない人がいると、遺産分割の話し合いが進められないことがあります。家庭裁判所の成年後見制度の案内をもとに、申立ての流れと費用、気をつけることをまとめました。
2026年10月に裁判所・法務省・外務省・国税庁の公式ページで確認しました確かめ方
要点
- 判断能力が十分でない相続人は、遺産分割の話し合いを自分でするのが難しいことがある。家庭裁判所に成年後見などを申し立てる
- 申立ての費用は収入印紙800円と登記用2,600円、郵便切手。鑑定をするときは鑑定費用(多くは10万円以下)
- 後見は遺産分割のあとも続く。後見人は、本人の法定相続分を確保するのが基本
ふつうの相続と違うところ
- 認知症などで判断能力が十分でない人は、遺産分割の話し合いを自分でするのが難しい場合がある。そうした人を支えるのが成年後見制度。(法務省)
- 家庭裁判所に後見(判断能力の程度によっては保佐・補助)の開始を申し立てる。選ばれた成年後見人は、本人の財産に関する法律行為を本人に代わって行う。(裁判所)
- 後見人は本人の代理人として遺産分割協議に加わり、原則として本人の法定相続分を確保する。法定相続分での協議が難しい特別な事情があれば、事前に家庭裁判所に相談する(京都家庭裁判所の後見人向けハンドブック)。(裁判所)
- 後見人も同じ相続人のときは、本人と利益がぶつかるため、その遺産分割に限って家庭裁判所が選ぶ特別代理人が本人を代理する(後見監督人がいれば不要)。(裁判所)
- 後見は、遺産分割など申立てのきっかけになった用事が済んでも終わらない。本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続き、家族の希望でやめることもできない。(裁判所)
- 2026年6月に成年後見制度を見直す改正法が成立した(6月24日公布)。施行は公布から2年6か月以内の政令で定める日で、それまでは今の制度が使われる。(法務省)
進め方
- 本人の判断能力について、かかりつけの医師に成年後見制度用の診断書を書いてもらいます
- 本人の住所地の家庭裁判所に、後見(判断能力の程度によっては保佐・補助)の開始を申し立てます。後見人の候補者を書けますが、だれを選ぶかは家庭裁判所が決めます
- 選ばれた後見人が、本人に代わって遺産分割の話し合いに加わります。後見人も相続人のときは、その遺産分割のために特別代理人を選んでもらいます(後見監督人がいれば不要)
- 遺産分割のあとも、後見人は本人の財産を管理し、家庭裁判所に報告を続けます
相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月)は、後見人が選ばれるのを待っても延びません。分け方が決まっていないときの申告のしかたは相続税の申告は自分でできる?を見てください。親が元気なうちに遺言書で分け方を決めておくと、遺産分割の話し合いがいらなくなることがあります。
家庭裁判所の手続き
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続き | 後見開始の審判(判断能力の程度により保佐開始・補助開始) |
| 申し立てる人 | 本人、配偶者、四親等内の親族など |
| 申し立てる先 | 本人の住所地の家庭裁判所 |
| 費用 | 申立手数料の収入印紙800円分、登記手数料の収入印紙2,600円分、連絡用の郵便切手(額は裁判所ごとに異なる)。本人の判断能力の鑑定をする場合は鑑定費用もかかる(額は医師や事案で決まり、公式の定額はない。2025年は鑑定をした事件が全体の約3.4%、その約85.8%で鑑定費用が10万円以下) |
| おもな書類 |
|
期間の目安:2025年に終わった成年後見関係の事件のうち、約71.1%が2か月以内、約93.8%が4か月以内に終わった(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」)。(裁判所)
成年被後見人に関する特別代理人の選任(後見人も相続人のとき)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続き | 成年被後見人に関する特別代理人の選任(後見人も相続人のとき) |
| 申し立てる人 | 後見人等、本人、本人の親族、利害関係人 |
| 申し立てる先 | 後見開始の審判をした家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円分と郵便切手(額は裁判所ごとに異なる) |
| おもな書類 |
|
2026年の法律の改正
2026年6月17日成立、6月24日公布した民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)で、成年後見の制度が見直されます。成年後見制度の見直しは、公布の日から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日に施行(法務省のページでは具体的な日付は示されていない)。それまでは今の制度が使われます。
- 後見と保佐をなくし、本人に必要な事柄だけ代理権・取消権を付ける「補助」に一本化する
- 判断能力を欠く常況にある人は、法律で決めた重要な財産行為を取り消せる「特定補助」を選べる
- 判断能力が回復していなくても、利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、利用を終えられる(たとえば遺産分割の代理権だけを付ける使い方が想定されている)
- 補助人を選ぶときに本人の意見を重視し、補助人には本人の意向を把握する義務。本人の利益のため特に必要なときは交代(解任)できる
- 補助人が、本人の死後に火葬・埋葬の契約などをできるようになる
- いま後見・保佐を使っている人は、基本的に今の内容のまま続けられる。新しい補助への切り替えや、取消しの申立てもできる
使えるツールと相談先
手続きの書き方は家庭裁判所の家事手続案内で、法律の相談は法テラスや弁護士会の法律相談センターでできます。住んでいる地域の家庭裁判所は地域の窓口を探すで探せます。
よくある質問
認知症の家族の代わりに、ほかの家族が署名してもいいですか?
本人の代わりに、ほかの家族が署名することはできません。判断能力が十分でないときは、家庭裁判所に成年後見などを申し立て、選ばれた後見人が本人に代わって遺産分割に加わります。
後見は、相続の手続きが終われば終わりますか?
今の制度では終わりません。本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続き、家族の希望でやめることもできません。2026年に成立した改正法が施行されると、必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば終えられるようになります。
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